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本ブログは、医療空間における権力構造や、そこに生じる心理的な嫌悪感・ざわつき等を分析・考察するものです。特定の医療機関や従事者を非難・攻撃するつもりはありませんが、記事の性質上、医療現場の生々しい実態や直接的な表現が含まれる場合があります。ご自身の心身の状況に合わせて、無理のない範囲で閲覧をご判断ください。詳しくはサイトポリシーをご一読ください。
こんにちは、御簾納です。
クリニックを歩いていると、ある一つの色の支配力に驚かされます。白です。
壁、床、家具、それにスタッフの衣類まで、日本の医療空間では白が「清潔」「無菌」「誠実」の象徴として、ほとんど強迫観念のように使われています。
ノートを読み返していたら、私はこの白について、なかなか熱心に書き留めていました。
いわく、光をほとんど反射する純白の空間は、心理的に緊張を誘発する。青みの強い白い壁は人肌の血色を吸収するので、パウダールームの鏡を覗いた患者が、自分の顔色を実際より悪く見てしまう。すると「やはり自分は病気なのだ」という思い込みが強化され、不安が深まる。
だから、と当時の私は続けています。冷たい純白ではなく、生成りやベージュを使うべきだ。わずかに黄色や赤みを含んだ色調は、空間の視覚的な温度を上げてくれる。その微かな温もりが患者の呼吸を深くし、内診時の筋肉の緊張を和らげる一助になるはずだ、と。
なかなか良いことを言っていますね。
……と、感心しかけて、手元が止まりました。
私は少し前に、まったく逆のことを書いていたはずです。
レディースクリニックの待合室がアグレッシブなまでのパステルカラーに支配されている、あれは何なのか、という話です。あのとき私はこう結論づけました。あれは女性を癒すためではなく、これから奥で行われる医療行為の生々しさを中和し、隠蔽するための、施設側のカモフラージュである、と。
色で誤魔化すな、と言っていたわけです。
それが数回後には、生成りやベージュを使いなさい、と言っている。
自分で言うのもなんですが、これは、どうなのでしょうか。
言い訳を考えてみました。ピンクの花柄は装飾で、生成りは色温度の調整だから、性質が違う。前者は隠蔽で、後者は配慮だ。
……いや、苦しいですね。どちらも、壁の色を変えることで人の緊張を操作しようという話です。やっていることは同じで、私が良いと思う色かどうかが違うだけでした。
そう考えると、なぜ私はピンクには腹を立てて、ベージュには乗り気だったのでしょうか。
たぶん、ピンクが「女性向け」という記号を持っているからだと思います。あれを見ると、施設側が女性というものをどう考えているかが透けて見える気がして、腹が立つ。一方でベージュは無色に近いので、そういう記号を持たない。
しかし、無色に見えるというのは、私の目にそう見えるというだけの話です。私が違和感を持たないものは正解で、違和感を持つものは欺瞞。ずいぶん都合のいい基準です。
そして、そもそもの問題があります。あの部屋で緊張しているのは女性で、私ではありません。
純白が冷たいのか、生成りが温かいのか、ピンクが白々しいのか。それを決める資格が私にあるのかというと、たぶん、ないのです。壁の前で脚を開いたことがないので。
ノートには、まだ続きが書いてありました。清潔感とは汚れがないことだけを指す言葉ではない、空間から冷たさを排除し、人間の体温に近い色調で包み込むことこそが真のホスピタリティである、と。
我ながら、よく書けています。よく書けているだけに、少し困っています。
それでは、また気がむいた時に。


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