【No.091】トリビアの部屋① —— 「内診台」という名前を持たない世界

海外・比較文化論

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こんにちは、御簾納です。

重い話ばかりだと息が詰まるので、今回からは少し趣向を変えて、婦人科にまつわる「トリビア」みたいなものをご紹介しようと思います。  

かつてこのブログでも、日本の婦人科に置かれている「全自動でウィーンと脚を開かされる椅子」が、いかに特殊で暴力的な空間を作り出しているかについて、これでもかというほどネチネチと考察してきました。

実はあの機械、物理的な構造が日本独自のガラパゴス進化を遂げているだけでなく、「言葉の概念」としても、世界的に見て非常に特異な存在なのです。  

突然ですが、海外(たとえば英語圏)の女性たちが、あの診察用の椅子のことを何と呼んでいるかご存知でしょうか。

「gyno chair(婦人科の椅子)」という俗語は一応存在しますが、日常会話や実際の診察室で使われることはほぼありません。彼女たちや現地の医師たちは、あの場所を単に「the table(台)」や「the bed(ベッド)」と呼びます。  

フランス語やドイツ語でも事情は同じです。「婦人科用診察台」という長い医学用語はあっても、日本の「内診台」のように、たった3文字(漢字)で誰もがその光景をまざまざと思い浮かべ、絶望的な気分になるような「専用の重い名詞」は存在しないんですよ。  

これには明確な理由があります。

以前にも触れましたが、欧米の婦人科では日本のような専用のハイテクからくり椅子を使いません。一般的な平らな診察ベッドの足元に、「Stirrups(あぶみ)」と呼ばれる足を乗せる金属のパーツを取り付けて代用しているからです。

つまり、彼女たちにとってあの場所は、あくまで「ただのベッド(table)」に過ぎないわけです。  

一方で、日本の「内診台」。

この言葉の響きが持つ、圧倒的な存在感と重力はどうでしょう。

「今日、内診台に乗るの嫌だな」

日本の女性たちは、単なる「台」ではなく、「内診台」という強固な名前を持った特別な装置として、あの空間を認識しています。  

言葉って、概念を固定化する力がありますよね。

日本において「内診台」という強烈な専用名詞が一般化しているのは、あの機械があまりにもシステマチックに完成されており、女性から肉体のコントロールを奪う「独立した権力装置」として君臨している証拠なのだと、私は深読みしてしまいます。  

「The table」と「内診台」。

ただの台と呼ぶか、専用の装置として名付けるか。この些細な言葉の違いの中にも、日本特有の「診察室の重苦しさ」を読み解くヒントが隠されている気がします。言葉って本当に怖くて面白いですね。

それではまた、次のふとした違和感の前で、お会いしましょう。

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