【No.048】ラテックスの手袋 —— 『触れているのに触れていない』絶対的断絶(Sさんとの対話3)

権力と医療倫理

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こんにちは、御簾納です。

電動内診台による同意なき開脚、視覚の剥奪、クスコによる冷たい拡張。機械や金属による暴力性を語り終えた後、Sさんは医療空間に存在する「もう一つの極めて薄い壁」について言及しました。

「器具を使わない触診のとき、先生がゴムの手袋をつけて中まで指を入れてくるじゃない? あれが一番、自分がただの『モノ』として扱われてるって実感して、すごくやり切れない気持ちになるんだよね」

ラテックスの手袋。厚さわずか0.1ミリの、医師の両手を覆う薄いゴムの壁です。

冷静に考えてみてください。男の太い指が膣の奥深くまで挿入され、内部を直接まさぐっています。行為そのものを文字に起こせば、それは極めて生々しく、濃厚な性的接触(愛撫)に他なりません。しかし、なぜその圧倒的なエロティシズムの引力を前にして、空間は医療としての体裁をギリギリで保っていられるのでしょうか。

「手袋があるからだよ」とSさんは断言しました。

生身の皮膚と皮膚が直接触れ合うこと。それこそが、人間同士の熱とエロスの交歓の絶対条件です。しかし、このゴムの手袋は、その人間的な交歓を根底から徹底的に拒絶します。

これは「私はあなたの性器の奥深くに指を突っ込んではいるが、私の皮膚は直接触れていないのだから、これは決して性的な接触ではない」という、医師に対する『絶対的なアリバイ』を付与するための免罪符なのです。

そして、女性の側にとって、この手袋は想像を絶する屈辱と虚無をもたらします。

医師の指を覆う冷たいゴムの感触は、女性に「あなたは今、直接触れるには値しない、あるいは直接触れれば感染のリスクがある汚染されたサンプルとして扱われているのだ」という残酷なメッセージを無言で突きつけます。挿入された指が動くたびに鳴る、ゴムが擦れる「ギュッ、ギュッ」という無機質な摩擦音。それは、女性の身体から人間としての尊厳を削ぎ落とす完了の合図です。

「触れているのに、触れていない」

この絶対的な断絶の壁を一枚挟むだけで、男の生々しい指の挿入は、合法的な医療行為へと魔法のようにロンダリングされます。

Sさんの解剖学的なまでに緻密な自己観察の前に、私はただ、医療というシステムがいかに残酷な顔を隠し持っているかを思い知らされるしかありませんでした。

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