【No.049】概念の分断と視覚の漂白 —— 10万ルクスの無影灯の下で

権力と医療倫理

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本ブログは、医療空間における権力構造や、そこに生じる心理的な嫌悪感・ざわつき等を分析・考察するものです。特定の医療機関や従事者を非難・攻撃するつもりはありませんが、記事の性質上、医療現場の生々しい実態や直接的な表現が含まれる場合があります。ご自身の心身の状況に合わせて、無理のない範囲で閲覧をご判断ください。詳しくはサイトポリシーをご一読ください。

こんにちは、御簾納です。

Sさんとの対話は、器具による物理的な暴力から、さらに一段深い「空間の欺瞞」へとメスを入れていきます。

女性たちが婦人科において最も根源的に抱いている「恥ずかしい」という感情の発生源。それは、子宮や卵巣といった「見えない内臓」を見られることではありません。そこへ到達するまでにどうしても通過しなければならない、自らの最も淫らで性的な象徴である「外側(外性器)」を、見知らぬ男(医師)の前に晒すことへの耐え難い羞恥心です。

しかし、Sさんは呆れたようにこう語りました。

「医療ってさ、本当に都合がいいんだよね。『私たちが診察しているのは内側の病気だから、入り口には性的な意味は一切ありません』って顔をするじゃない? でも、目的地がどれだけ内側の臓器だろうと、そこに到達するためには、絶対に一番見られたくない外側を直視して、かき分けないとダメでしょ?」

この「目的は内側だから」という概念の分断トリックによって、女性の根源的な羞恥心は内診室の冷たい空調の中に虚しく置き去りにされます。

10万ルクスとも言われる無影灯(影ができないほど強烈な医療用ライト)の真っ白な光が、女性の最もデリケートな部位を、一切の陰影を許さずに容赦なく照らし出します。毛の生え際から粘膜の色、形状に至るまで、男(医師)の目の前に、これ以上ないほどの解像度で「究極のエロティシズムの発生源」が暴き出されるのです。

しかしここで、医療空間は医師に対して極めてグロテスクな自己検閲を強要する。それが「視覚の漂白(あるいはまなざしの去勢)」です。

医師は、目の前に晒されているのがエロティシズムの象徴であることを百も承知でありながら、それを意図的に「ただの入り口の肉のヒダである」と見なすフリをしなければなりません。極めて事務的で、無機質で、一切の感情を排した「死んだまなざし」で観察し、視覚のフィルター内で完全に漂白(無効化)するのです。

女性は「恥ずかしい」と血を流しているのに、男の冷徹な視覚フィルターはそれを無意味なノイズとして弾き返します。究極の羞恥心と、究極の無関心。エロティシズムの象徴を直視しながら、そこに人間としての尊厳や感情を一切見出さないという視覚の暴力が、女性の心を静かに、そして確実に殺していくのです。

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