【No.103】デリケートゾーン超深掘り④(最終回)—— 迷走する最新ワードと、取り残された「男の股間」

社会とジェンダー

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こんにちは、御簾納です。

デリケートゾーン超深掘り連載、今回で本当に、本当に最終回です。  

前回は「欧米のIntimate」や「韓国のYゾーン」など、海外の涙ぐましいネーミング文化をご紹介しました。

日本が誇る最強の魔法の言葉、「デリケートゾーン」。この言葉の普及によって、あの場所は「厳重に保護すべき国宝」へと昇格し、巨大な美容市場が完成したわけです。  

これでめでたし、めでたし……とはならないのが、美容業界の恐ろしいところです。

彼らは今、さらなる高み(あるいは迷走)へと向かっています。

最近の少しお高めの美容雑誌や、意識の高いコスメブランドのサイトを覗いてみてください。驚くべきことに、あれほど重宝されていた「デリケートゾーン」という言葉すら、「ちょっと直接的すぎるし、なんか古臭くない?」とばかりに、リストラされようとしているのです。  

では、今なんと呼んでいるのか。

最新のトレンドワード、それは「フェムゾーン」、そしてそのケアを指す「フェムケア」です。  

……いやいやいや。

「フェム(Female=女性)」の「ゾーン」って。ついに具体的な場所の指定すら放棄してしまいました。「女性の領域」と言われたら、それはもう股間の話なのか、女性専用車両の話なのか、はたまたSF映画に登場する謎のバリアの話なのか、サッパリわかりません。  

「最近、フェムケアにこだわってて、フェムゾーン専用のセラムを使ってるんだ」

字面だけ見ると、どこのIT企業のクラウド導入事例ですか? とツッコミたくなります。  

「あそこ」→「デリケートな部分」→「デリケートゾーン」→「フェムゾーン」と、オブラートを何十枚も重ね続けた結果、ついに実体すら見えなくなり、完全な概念(あるいは暗号)へと昇華してしまったのです。「そこまでやるか!」の極致ですね。  

そして最後にもう一つ。

この女性たちの「果てしないオブラートと美容錬金術」の歴史を振り返ったとき、私たち男性陣は、ある残酷な現実に直面します。  

男のソレには、魔法をかけてもらえる「対義語」すら存在しない、という事実です。  

女性のソレが「デリケート(繊細)なゾーン」として国宝級の扱いを受け、専用の泡ソープで優しく洗われ、美容液を与えられ、香水を纏っている間。

男のソレは何と呼ばれているでしょうか。

「タフ・ゾーン」ですか? 「ダイナミック・ゾーン」ですか? 「アドベンチャー・ゾーン」ですか?  

いいえ、ただの「股間」、あるいは「タマ」です。そこには、いっさいの神秘性も、オブラートもありません。

お手入れ方法に至っては、脇の下や足の裏を洗うのと同じ「特売で買った398円のボディソープ」を使い、時にはナイロン製の硬いボディタオルでガシガシと無骨にこすり洗いされるのみ。  

女性のソレが「VIPルームの国宝」なら、男のソレは「部活帰りの泥だらけのスポーツ用品」と同レベルの雑な扱いです。

もちろん、男の股間だって皮膚は薄いですし、構造的には十分「デリケート」なはずなのですが、社会は決してそれを保護区(ゾーン)には指定してくれませんでした。男の身体は、いつだって白日の下に晒され、身も蓋もない「現実」として処理される運命にあるのです。  

「デリケートゾーン」という言葉一つから、社会の隠蔽構造、果てしない資本主義の暴走、そして男女の残酷な格差まで見えてくる。言葉とは、本当に恐ろしく、そして面白いものですね。  

全4回にわたる壮大な無駄話にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。次回からは、また通常運転に戻りたいと思います。  

それではまた、次のふとした違和感の前で、お会いしましょう。

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