【閲覧に関するご案内】
本ブログは、医療空間における権力構造や、そこに生じる心理的な嫌悪感・ざわつき等を分析・考察するものです。特定の医療機関や従事者を非難・攻撃するつもりはありませんが、記事の性質上、医療現場の生々しい実態や直接的な表現が含まれる場合があります。ご自身の心身の状況に合わせて、無理のない範囲で閲覧をご判断ください。詳しくはサイトポリシーをご一読ください。
こんにちは、御簾納です。
「デリケートゾーン」という言葉について超深掘りする短期連載の第2回目です。
前回は、この言葉が生み出した「過剰な美容錬金術(専用香水まであるぞ!)」についてツッコミを入れました。ではそもそも、この「デリケートゾーン」という和製英語は、いつ、どのようにして生まれたのでしょうか。
時計の針を少し戻して、昭和から平成初期のテレビCMや雑誌を思い出してみてください。
当時、女性のデリケートゾーンのトラブル(痒み止めなど)や生理用品のCMでは、この部位を何と呼んでいたでしょうか?
答えは、「あそこ」、あるいは「デリケートな部分」です。
「あそこのかゆみに……」「デリケートな部分の不快感に……」
そう、昔は「ゾーン(領域)」という概念はなく、単に代名詞でぼかすか、「部分」と呼ぶしかなかったのです。医学用語である「陰部」や「外陰部」という言葉は、お茶の間に流すにはあまりにも生々しく、重すぎました。
つまり、かつての日本社会において、この部位は「名前を呼んではいけないあの場所(ヴォルデモート卿みたいな扱いですね)」だったわけです。
そんな「あそこ」に転機が訪れたのは、1990年代後半から2000年代にかけてのこと。女性の「脱毛エステ(サロン)」が一般化し始めた時代と重なります。
エステ業界は、女性の股間の脱毛をビジネスにするにあたり、巨大な壁にぶち当たりました。
「股間の毛を処理しませんか?」では誰も来てくれません。「陰毛の脱毛」でも生々しすぎます。そこで彼らはまず「Vライン」という、水着の形になぞらえた素晴らしい暗号を発明しました(後にIライン、Oラインへと拡張されます)。
そして、この部位の「肌そのもの」のケアやお手入れを啓蒙するために、かつて生理用品のCMで使われていた「デリケートな部分」というオブラートに、ある革新的な英単語をドッキングさせたのです。
それが「ゾーン(Zone)」でした。
この「ゾーン」という言葉の接着こそが、まさに歴史的発明でした。
「部分」と言われると単なる肉体の一部ですが、「ゾーン」と言われた瞬間、どうでしょう。スクールゾーン、セーフティゾーン、トワイライトゾーン……。
「ゾーン」という言葉には、「明確な境界線が引かれた、特別なルールの適用される指定区域」というニュアンスが含まれます。
ただの「あそこ」が、「デリケートゾーン」と命名された瞬間、そこは「特別なケアと保護を要する、立ち入り制限のかかった神聖な領域」へと一気に格上げされたのです。
名もなき「あそこ」からの、奇跡の大出世。
言葉に「ゾーン」をつけただけで、そこに途方もない付加価値が生まれ、前回お話ししたような「専用の香水」まで売れる一大市場が拓けました。日本のコピーライティング史に残る、最高傑作にして最大の魔法と言っても過言ではありません。
さて、次回は第3回。
この素晴らしいぼかし言葉「デリケートゾーン」、実は日本だけのガラパゴス用語だというお話です。海外(欧米やアジア)ではどうやって呼んでいるのか? 次回「海外編」でお会いしましょう。
それではまた、次のふとした違和感の前で、お会いしましょう。


コメント