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本ブログは、医療空間における権力構造や、そこに生じる心理的な嫌悪感・ざわつき等を分析・考察するものです。特定の医療機関や従事者を非難・攻撃するつもりはありませんが、記事の性質上、医療現場の生々しい実態や直接的な表現が含まれる場合があります。ご自身の心身の状況に合わせて、無理のない範囲で閲覧をご判断ください。詳しくはサイトポリシーをご一読ください。
こんにちは、御簾納です。
最近は「肩の力を抜いて」と言いながら、結局いつもの理屈っぽい空間考察に戻ってしまいがちですが、今回も日常のふとした体験からお話しさせてください。
先日、少し用事があって、街の昔ながらの耳鼻咽喉科に行く機会がありました。
皆さんの中にも記憶にある方がいるかもしれませんが、昔の耳鼻科って独特の空間構造をしていますよね。いわゆる「中待合」というやつです。
診察室の中に長椅子が置かれていて、今まさに治療を受けている患者さんのすぐ背後で、次の患者が順番を待つスタイル。
久しぶりにその空間に入って、改めて痛感しました。「これ、冷静に考えるととんでもなく気まずい空間だな」と。
耳鼻科の治療というのは、細い金属の管を鼻の奥深くまで突っ込まれる、かなり侵襲性の高いものです。ズゴゴゴという強烈な吸引音とともに、「あー、結構奥まで詰まってますね」なんていう個人的な診断内容まで、背後に座っている赤の他人に丸聞こえになります。さらに治療後は、壁際にズラリと並んだネブライザー(吸入器)の前にみんなで横並びになり、シューシューと蒸気を吸い込む無防備な姿を共有するわけです。
ふと待合室を見渡すと、そこには若い女性の患者さんが一人もいませんでした。
そりゃそうです。あんな滑稽な姿や音を赤の他人に晒すなんて、若い女性からすれば恥ずかしいし、できれば避けたいに決まっています。あのスタイルが当たり前だった時代は諦めるしかなかったのでしょうが、現代の感覚からすれば、あれはプライバシーの欠片もない異常な公開処刑です。
実際、最近新しくできる耳鼻科を調べてみると、この「筒抜けスタイル」は激減しています。
診察室はしっかり個室化され、ネブライザーの席にも外から見えないようにパーテーションが設けられている。かつての「医者が効率よく次々と患者を処理するための空間」から、患者の羞恥心に配慮した「選ばれるための空間(ビジネス重視)」へと、耳鼻科も確実にアップデートされているわけです。
ここでふと、私の本来のテーマである「婦人科」の空間構造について考えてしまいました。
街のレディースクリニックは、それこそ耳鼻科とは比べ物にならないほど、昔からプライバシーと隠蔽(分厚い壁と内診台のカーテン)に異常なまでのコストをかけてきました。
しかし、それがひとたび「効率的な集団処理」の場になると、急に空間の暴力性が顔を出します。
例えば、少し前の大学病院などの大病院。パーテーションやカーテン1枚で仕切られているだけで、同じ空間に内診台が横に何台も並んでいる光景は珍しくありませんでした。
あるいは、地域や職場でやってくる「子宮がんの検診車」。限られたスペースで効率よく人数をこなすため、狭い車内に内診台が2台隣り合わせに設置されているタイプも存在します。
耳鼻科が「ビジネスとしての配慮」から個室化へと向かっているのに対し、本来最も秘匿されるべき婦人科の空間が、大病院や検診車という「効率」を求められるシステムの中では、平気で隣り合わせのベルトコンベアに乗せられてしまう。
そこには「見せないためのカーテン」こそあれど、空間の根底に流れる「患者を効率よく処理する」という力学は、あの昔の耳鼻科の中待合と何ら変わらないのではないか。
結局のところ、女性たちを守るための空間のプライバシーというのは、医療の絶対的な「効率」の前ではいとも簡単に無効化されてしまうものなのだなと、ズゴゴゴという吸引音を聞きながら考えてしまった、ある日の午後でした。
それではまた、次のふとした違和感の前で、お会いしましょう。


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