【No.007】密室の音響学――「モノ」へと切り替わるスイッチの音

空間と装置

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本ブログは、医療空間における権力構造や、そこに生じる心理的な嫌悪感・ざわつき等を分析・考察するものです。特定の医療機関や従事者を非難・攻撃するつもりはありませんが、記事の性質上、医療現場の生々しい実態や直接的な表現が含まれる場合があります。ご自身の心身の状況に合わせて、無理のない範囲で閲覧をご判断ください。詳しくはサイトポリシーをご一読ください。

こんにちは、御簾納です。

今回は、あのパステルカラーの内診台が支配する空間について、「視覚」ではなく「聴覚」の側面から解剖してみたいと思います。

当然のことながら、男性である私はその密室の中で実際に診察を受けた経験はありません。しかし、以前付き添い等で待合室のソファに座った時、あるいはクリニックの空間設計を観察している時、薄いドアの向こうから微かに、しかし確実に漏れ聞こえてくる音があります。

そして何より、私がこれまで膨大に読み込んできた女性たちの闘病記や、ネット上に綴られた匿名の体験談において、彼女たちが共通して「最も恐怖を感じる」と記しているいくつかの特異な音が存在するのです。

一つ目は、内診台が稼働する際の「ウィーン」という無機質なモーター音です。

台の上に腰掛けた後、スイッチ一つで座面が上昇し、背もたれが倒れ、両脚が機械の力で自動的に外側へと捻り開かれる。その一連の強制的な身体の変形を伴奏するように鳴り響くモーター音は、待合室にいる非当事者の耳には単なる機械音にしか聞こえません。

しかし、台の上にいる女性にとって、この音は「自立した一人の人間」から、医師によって処理される「無力な物質(患部)」へと強制的に切り替わる、残酷なスイッチの音として機能しています。

二つ目は、金属製の器具(クスコなど)がカチャカチャと触れ合う金属音です。

多くの場合、女性の視界は分厚いカーテンによって遮断されています。見えないからこそ、聴覚は極限まで研ぎ澄まされます。カーテンの向こう側で、冷たい金属の器具が準備され、それが今から自分の最もデリケートな部位に挿入されるのだという事実を、視覚の代わりに「音」が容赦なく伝えてくるのです。

見えない暗闇の中で、機械によって脚を開かれ、正体不明の金属音が近づいてくる恐怖。

それは例えるなら、暗闇の中で身動きが取れないまま、見えない刃物や金属が研がれる音だけを聞かされているような、根源的な防衛本能を脅かす体験です。

男性社会はしばしば、「ただ診察を受けるだけなのに、何をそんなに怖がることがあるのか」と冷笑します。しかしそれは、この「密室の音響」が、これから女性が強いられる圧倒的な無力感をいかに増幅させているかという事実を、彼らがまったく想像できていないからです。

あの密室には、視界の強制的な剥奪だけでなく、聴覚を通じた「客体化(モノ扱い)」のプロセスが、極めてシステマチックに組み込まれているのです。

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